2017/01/10

2016年、大晦日。僕は妻の古里である山梨にいた。早めにお風呂を済ませ、家族で夕食をとった。その後、僕と妻はテーブルからこたつに移動し、お菓子をつまみながら〝笑ってはいけない〟をみて笑った。父とは真逆の物静かなお義父さんはパソコンに向かいながら時々僕らに話しかけてきた。ステラおばさんそっくりなお義母さんは手際よく台所仕事をこなし、合間合間で僕らの隣に座りビールを呑んだりしていた。「明日、初日の出みにいくけど、イガラシさんも行く?」とお義母さんが誘ってくれたので「行きます!初日の出みたことないんで嬉しいです。」と答えると、僕よりも嬉しそうにニカッと笑った。日の出は6時50分頃らしいので日付が変わるとすぐにみんな就寝した。

辺りが暗いうちに布団を出たのはいつぶりだろう。いそいそと着替えを済ませ、ダウンを着込み、1階のリビングへ降りていく。お義父さんはストーブの前で珈琲を飲んでいた。まだ部屋着でいるところをみるとどうやらお留守番らしい。お義母さんと妻と僕とで小高い丘まで車を走らせた。

人影はなかった。車から降りると冷たい空気にほっぺたがヒリヒリした。寒かったけど凍えるほどではない。天気が良くなるであろう清々しい朝だった。「あそこから太陽が昇るのかな?」なんて話していると、大きなカメラを持ったおじさんがやってきてカメラに負けず劣らずの大きな声で「やー、おめでとうございます!さむいですね~!」と新年の挨拶をした。僕たちも〝どうもー〟と挨拶をして少し世間話。そうこうしているうちにみるみる空は明るくなり、太陽が山の彼方から顔をのぞかせた。

僕は生まれてはじめて初日の出をみた。隣には妻とお義母さんと見知らぬおじさんがいて、太陽はとても眩しかった。

〝この写真はなんだ?〟と尋ねられても、ただそういう写真だとしかいいようがない。僕の撮るものは大体がそんな感じ。価値なんてものはない。ただ、どこかで、誰かと、シャッターを切るとき、僕の目の前に〝なにごともおこらなかった〟幸せが在ることだけは確かで、シャッターを切り終えたあと〝いつまでも変わらないといいな〟と小さく願う。運が良ければその時はまた訪れて、その繰り返しで、それがたまらなく尊くて。そうして積み重ねていくように撮ったものだから、ただそれだけでよくて。それだけのためにこれからも写真を撮り続けるのだろうと思った。